漁師須田直一さん(65)の棺(ひつぎ)の上には、たばこやおにぎりが置かれていた。

自宅近くで須田さんが津波に流されたと知り合いから聞いた。だが、避難指示圏内で自ら捜しに行くことはできず、警察や自衛隊も1カ月以上、捜索に入れなかった。避難所生活をしながら、もどかしさが募った。
今月14日、県警の捜索がようやく始まると、請戸地区周辺で身元不明の遺体が次々と見つかった。

見慣れた革製の犬の形をしたキーホルダーが目に飛び込んできた。軽トラックのキーをなくさないよう、須田さんにプレゼントしたものだった。
 「キーホルダーが私たちを引き合わせてくれた。一番幸せな時間を一緒に過ごした人。見つけてあげることができてよかった」。再会まで39日がたっていた。

最愛の人、39日たって対面 原発10キロ圏内で発見 2011年4月20日 朝日新聞