福島消防
「人の役に立つ事が好きで、優しかった父。私はこんな父が大好きでした」
福島県の遺族代表として最後に言葉を述べた同県相馬市の中学2年、村岡美空(みく)さん(14)は、津波で命を失った消防団員で父の稔真(としまさ)さん=当時(34)=への思いを読み上げた。

稔真さんとは、小学校の前で偶然、会った。美空さんに家族の無事を確認すると、「消防団の活動に入る」と言い残し、車で海岸方面へ走り去った。これが最後だった。
美空さんはまもなく、稔真さんが向かった先の住宅地が津波に襲われ、海の底に沈むのを目の当たりにした。「父と連絡が取れず、心配でたまらなかった」。無事であってほしいという祈りは届かず、数日後、市内の遺体安置所で変わり果てた姿と再会した。

今、福島県は東京電力福島第1原発事故による放射能への不安などから人口減が加速する。避難生活を続ける住民のうち6万3千人は県外で生活している。美空さんも1学期終了後、故郷を離れ、神奈川県内で避難生活を始めた。

将来は「お父さんのように、人のために働きたい」

「復興に向けて皆で力を合わせ、がんばっていきたいと思います」
力強く言い切った最後の言葉は、稔真さんへの誓い。こぼれる涙を、そっと左手でぬぐった。

 
「父が大好きでした」 福島県代表の村岡美空さん 政府追悼式 2012/03/11 産經新聞