震災で68人の職員が死亡・行方不明になった岩手県陸前高田市は18日、人員確保のため採用試験を実施する。

市職員だった妻と母を津波で亡くした脇坂貢さん(39)も「妻の遺志を引き継いで、高田の街のために働きたい」と試験に臨む。

県立高田高校バスケ部でボランティアのコーチを務める脇坂さん。妻絵理さん(当時40歳)とともに同部OBで、社会人チーム時代に親しくなった。3月に卒業した長男健吾さん(18)は同部の元キャプテン、現在2年の長女美秋さん(16)も同部員。大会になると絵理さんがビデオカメラを握り、母育子さん(当時66歳)が声援を送った。その妻と母の命を、津波が奪った。

4月。青森県内の大学への入学が決まっていた健吾さんは「故郷を離れたくない」と泣いた。息子の大学進学は絵理さんの悲願でもあった。脇坂さんは健吾さんを引きずるようにして青森行きの列車に乗せたという。

街の未来を背負うはずの若者を何人も失った陸前高田。「大学卒業後は、必ず戻って働く」。健吾さんの言葉が、脇坂さんには何よりの支えだ。「みんなで、この街を良くするよ」。亡き妻に誓う。

東日本大震災:妻の遺志継ぎ市職員目指す 陸前高田 2011年9月1日 毎日新聞