「一番きれいな星が、ママだよ」。パパに教えられ、澄んだ夜空を見上げる。岩手県陸前高田市の保育園児、及川律ちゃん(4)は、東日本大震災で母久美子さん(32)を亡くした。「ぼくも流されて、ママに会いたいなあ。波になりたい」。小さな手で描いた母の似顔絵。

市立図書館の職員だった久美子さん。あの日、大きな揺れの後で隣接する市立体育館に同僚らと避難し、そこで津波にのまれた。仕事着のエプロン姿のままだった。

「ママがいるか、確かめるんだ」律ちゃんは、パパやおばあちゃんと別棟にあるお風呂に行く時、夜空を見上げる。
「真ん中の一番きれいな星がママ。抱っこされて、夜空のキラキラお星になって、一緒に街を見たいな」
ママに会えたら、律ちゃんは伝えたいことがある。
「パパは無事だったよ。ママ、おうちにずっといてちょうだい」

星になったママへ 「波になって会いたい」 2011年4月7日 毎日新聞